歯周病と喫煙

歯周病とは


歯は歯ぐき(歯肉)・歯根膜・骨(歯槽骨)等の歯周組織によって支えられており、

歯周病というのは、歯を支えている歯ぐき、結合組織、骨に起こる炎症を症状とする病気です。

口内の細菌による混合感染と考えられています(右図)。

お口の中が正しく清掃されないと、口の中の細菌が食べかすを分解し、歯の表面に膜(バイオフィルム)状の共同体であるプラーク(歯垢)を形成します。


歯周病とはこのプラークが歯を支持している組織【歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨】に炎症を起こし、徐々に進行し、歯肉付着部が崩壊しやがては歯の喪失に至る病気です。

また、プラークの中の細菌が産生する酸は虫歯の原因にもなります。
プラークは唾液中のカルシウムなどを取込み、硬い歯石になり、
その歯石の上にはプラークが付着しやすく、歯石も歯周病の原因となります。

この歯周病の発症と進行には様々な危険因子が関与しており、日常の生活習慣に由来する様々な要因があります。
それらの要因の中でも喫煙、糖尿病、ストレスなどが重要な因子と考えられています。

喫煙はなぜ歯周病を悪化させるのか


タバコには三大有害物質(ニコチン、タール、一酸化炭素)をはじめ約200 種類もの有害物質が含まれています。

1: ニコチンの強力な血管収縮作用によって、歯ぐきが炎症を起こしても出血が抑えられ歯周病の症状である出血が隠されてしまうため、気付かないうちに歯周病が重症化してしまいます。

2: タールは歯に黒褐色に沈着し、不快な外観を作り出します。何よりもタールは発がん物質として有名です。

3: 一酸化炭素はニコチンと共に身体の免疫細胞の活動を著しく低下させます。これらの有害物質の相乗作用によって歯周病は悪化し、治療しても術後の経過が不良になるのです。


禁煙の効果はどの程度なのか


禁煙によって歯周組織は本来備わっていた免疫応答を数週間で回復するようになります。
また、歯周を治療することによって1年後には歯ぐきは本来の健康な状態に回復します。歯ぐきの黒ずんだ外観に関しても、時間はかかりますが少しずつ本来の健康な歯ぐきの色に戻ります。

禁煙をすることで間接喫煙(受動喫煙)による他人への迷惑をかけることがなくなります。

写真は1日20本ずつ30年間喫煙していた人が禁煙に成功した、約11年後の状態です。
禁煙前と禁煙後を比較して下さい。



お口が健康であることは、全身の健康にも大きくかかわっており,

生活の質の維持と向上に極めて重要です。

タバコをやめると右の表のような様々な良い変化が見られます。

禁煙の達成には周囲のサポートが不可欠

非喫煙者が考えるほど、喫煙者の方の禁煙は簡単なことではありません。

さらに心理的な依存も禁煙を困難にしている原因の一つです。


その理由はタバコの主要成分であるニコチンに強力な精神依存性があり薬物依存症(ニコチン依存症)にかかってしまうからなのです。

禁煙をはじめる方へ

1: 何のために禁煙をするのか明確で強い意志を持つこと。

2: 周囲の環境をととのえ、協力できる仲間作りをする。

3: 喫煙したい気持ちを発散させる方法を考える。

4: 専門家による禁煙サポート(カウンセリングとニコチン代替療法)を受ける。

禁煙支援は「禁煙開始支援」と「禁煙継続支援」があります。
ニコチン代替療法としてニコチンガムとニコチンパッチの2種類があり正しく利用すると有効です。

タバコをやめれば食物をおいしく味わって楽しむことができ、高齢社会の今、生活の質の向上にとっても重要なポイントになります。

当院は禁煙を推進しており、歯周病予防と全身の健康のためにも喫煙者の方には禁煙にチャレンジして、健康な生活を送っていただきたいと願っております。